血液中に含まれる尿酸の濃度が基準とされる数値を超え、慢性的に高くなっている状態が高尿酸血症です。
そもそも尿酸とは、体内で生成されたり、食物で接種されたりするプリン体が代謝されることで発生する物質です。
通常であれば、腎臓から尿中に排泄されるものです。
ただし、何らかの原因で排泄バランスが崩れてしまえば、血中濃度は上昇していきます。
それでも放置を続けていけば、痛風発作や腎障害(痛風腎)、尿路結石などの合併症を発症させることもあります。
自覚症状がほぼ出にくいとされ、健康診断の結果から発症に気づくことも少なくありません。
ただ将来的に起きるであろう健康障害の可能性を考えれば、早期発見・早期対応が肝心です。
なかでも同疾患は、中年世代の男性によく見受けられるとされていますが、昨今の食の欧米化や生活習慣の変化などによって、若年層や女性の患者数も増加傾向にあります。
どのような状態が高尿酸血症と定義されるかに関してですが、日本痛風・核酸代謝学会のガイドラインによれば、血清尿酸値が7.0mg/dL以上の場合としています。
血液検査によって、尿酸値は測定されるようになります。
実際にこの基準値の濃度を超えるようになれば、尿酸塩は結晶化していき、痛風発作等の発症リスクが高まるという科学的知見に基づいて設定されています。
ちなみに日本と諸外国では診断基準が若干異なることもあります。
なお尿酸値が高い状態にあっても自覚症状が出ないことがあります。
これを「無症候性高尿酸血症」といいます。
また関節に炎症がみられ、激痛を伴う発作が起きているとなれば「痛風(痛風発作)」と診断されます。
尿酸値の正常値は男性と女性で異なります。
これは女性の体内で分泌されるエストロゲン(女性ホルモンの一種)には、尿酸の排泄を促進させる作用があることが影響しています。
そのため、男性は3.6〜7.0mg/dL、女性では2.6〜5.5mg/dLの範囲が一般的な正常範囲とされています。
なお7.0mg/dL以上が高尿酸血症となりますが、さらに7.0〜8.0mg/dLが軽度高尿酸血症、8.0〜9.0mg/dLが中等度高尿酸血症、9.0mg/dL以上が重度高尿酸血症と分類されます。
なお9.0mg/dL以上の重度高尿酸血症の患者さんでは、痛風の発症リスクが高まります。
また重度でなくとも、尿酸値の数値が急激に変動することがあれば、痛風発作が誘発されることもあります。
この数値というのは、食事や運動、ストレスなどによっても変動するので、定期的にモニタリングをしていく必要もあります。
先でも触れましたが、尿酸は、体内に存在するプリン体という物質が代謝される過程で生成される最終産物、いわゆる残りカスになります。
この生成された尿酸というのは、約70%は腎臓、残りの30%程度は腸管より排出されていきます。
健康な方であれば、尿酸の「産生」と「排泄」のバランスがとれているわけですが、高尿酸血症を発症するとこの均衡が崩れることになります。
その原因については、大きく2つのメカニズムがあるとしています。
ひとつは、尿酸の産生が過剰になるケースで産生過剰型と呼ばれます。
もうひとつのタイプは、尿酸の排泄が低下するケースです。
これは排泄低下型といわれています。
日本人の高尿酸血症の患者さんの場合、産生過剰型と排泄低下型が組み合わさった「複合型」の患者さんが全体の60%程度を占めるとされ、排泄低下型が約25%、産生過剰型が約15%となっています。
それぞれのタイプの特徴を以下で説明します。
産生過剰型は、体内でプリン体の代謝が亢進していき、尿酸の合成量そのものが増加している状態です。
主な特徴としては、1日の尿中尿酸排泄量が成人男性で600mg以上みられるようになります。
またプリン体が多く含まれる食品の過剰摂取というケースもあります。
さらに細胞回転が亢進する疾患(白血病、多血症 等)、プリン体の代謝に関係する酵素の先天的異常がみられる場合などが挙げられます。
一方の排泄低下型は、尿酸を排泄する能力というのが腎臓で低下している状態です。
主な特徴としては、尿酸クリアランスが低下していることがあります。
また1日の尿中尿酸排泄量が減少しています。
さらに、腎機能障害がみられる、尿酸トランスポーター(URAT1、ABCG2 等)の機能異常といったことで起こります。
このほかにも一部の薬剤(利尿薬、低用量アスピリン 等)を使用することで引き起こされるケースもあります。
高尿酸血症の発症や病状の進行に関しては、日頃の生活習慣が大きく影響することもあります。具体的には以下の要素が挙げられます。
レバー、白子、魚卵、干物、エビ、イワシ、マグロ等の魚介類、肉類の内臓などにプリン体は多く含まれています。
果糖に関しては、代謝の過程でATP(アデノシン三リン酸)の消費を増加させます。
これが結果的ではありますが、プリン体代謝を促進させるので、尿酸の産生を増やすことにつながります。
アルコールは尿酸の排泄を低下させます。
また代謝の過程でATPの消費を増やすので尿酸の産生も増加していきます。
お酒の中でもビールは、プリン体が多く含まれるので、高尿酸血症の発症リスクを上昇させます。
肥満は内臓脂肪を蓄積させるものですが、これはインスリン抵抗性を招くほか、腎臓の中で尿酸再吸収を増加させることにつながります。
BMIの数値が高くなれば、それだけ高尿酸血症の発症リスクも上昇します。
運動を適度にしなければ、消費するエネルギーは少なく、摂取エネルギーの方が多くなりやすく肥満につながります。
適度に運動することは体重もコントロールしやすく、インスリンの感受性も改善されるようになります。
ただ激しい運動は、筋肉の分解を促し、尿酸値を一時的に上昇させます。
したがって、運動量には注意する必要があります。
水分の摂取が不足すれば、尿量は減少します。
これは尿酸の濃度を上昇させることになります。
運動で激しく汗を掻く、夏の時期などに拭き出すような汗が出たという場合は水分補給を怠らないようにしてください。
上記以外にも急激な体重の変動があった、ストレスの影響、慢性的な睡眠不足などによって尿酸値が上昇、あるいは影響を受けることもあります。
高尿酸血症は、遺伝的素因も存在します。
例えば、尿酸の排泄と再吸収に関係するトランスポーター(輸送体)遺伝子の変異は、高尿酸血症の発症リスクを高めます。
代表的なものとしては、URAT1、ABCG2、GLUT9などがあります。
またプリン体代謝に関わる酵素の先天的な異常(HPRT欠損症等)も高尿酸血症の発症の原因となります。
このほか、高尿酸血症や痛風の家族歴のある方についても発症リスクは、およそ2~3倍高くなるとされています。
高尿酸血症ではどのような症状がみられるか、あるいはどのように見分けるかについて説明します。
高尿酸血症の患者さんの多くは、無症候性高尿酸血症です。
これは自覚症状がみられません。
この場合、血液検査で尿酸値が高いと判明しても、痛みや不快感などを訴えることはありません。
なお全高尿酸血症患者さんの約70〜80%の方が無症候性高尿酸血症といわれています。
この場合、放置するケースがほとんどですが、長期間放置することがあれば、痛風発作や腎障害等を併発するリスクが高くなりますので要注意です。
ただ無症状であっても体内では結晶化した尿酸塩が蓄積していえることが考えられるので、数値の異常を指摘されたら一度当院をご受診ください。
初期症状というのは、高尿酸血症では現れることはほぼないとされています。
ただ一部の方では、以下のような変化を感じるということもあります。
高尿酸血症を発症すると様々な合併症のリスクが伴うようになりますが、よく知られているのが痛風発作です。
発症のメカニズムですが、血液中で尿酸が増えるようになる(尿酸濃度が上昇する)と、尿酸塩の結晶が関節内に沈着するようになります。
これが痛風結節を形成するなどして、激しい炎症反応を引き起こします。
この場合、関節は腫れ、強い痛みが伴うようになります。
痛風発作でよく見受けられる症状は、就寝中や明け方などに突然見舞われる激しい関節痛です。
関節の部位であれば、どこでも発症の可能性はありますが、なかでも親指の付け根(第1中足趾関節)に発症することが多いです。
その痛みは、患部に風が吹くだけで強い痛みが出るという表現などから痛風と名付けられました。
なお痛風発作時には、上記のほか、関節の赤み、腫れ、熱感も伴います。
先でも触れましたが、高尿酸血症は腎臓にも深刻な影響がみられるようになります。
尿酸というのは腎臓から排泄されるものですが、高尿酸血症の状態が続けば、腎臓の尿細管や間質に尿酸結晶が沈着し、腎機能障害の原因につながります。
腎臓への悪影響のひとつに尿酸腎症があります。
これは尿酸の結晶化によって、腎臓の組織が損傷し、炎症が起きるようになる病態です。
初期段階では自覚症状が現れにくいので、定期的な腎機能検査が欠かせません。
病状が進行すれば、蛋白尿や血尿、腎機能低下などが見受けられるようになります。
また、高尿酸血症は尿路結石を形成されるリスク因子でもあります。
尿路結石でよくみられる症状としては、激しい脇腹の痛み(疝痛)、吐き気・嘔吐、血尿などが挙げられます。
結石のサイズや位置によっては、尿路閉塞を起こし、緊急的な処置を行うこともあります。
長期的に高尿酸血症の状態が続けば、慢性腎臓病(CKD)を発症させるリスクも高くなります。
腎機能の低下は、尿酸の排泄能力も低下させます。
これが尿酸値を上昇させ、さらなる悪循環につながっていきます。
このように高尿酸血症の早期治療というのは、腎臓を保護していくという点においても非常に重要です。
痛風など明らかな症状が出ている場合は、速やかな治療が必要です。
血清尿酸値が7.0 mg/dL以上が高尿酸血症の診断基準ですが、自覚症状が出ていない場合は、尿酸値が9.0mg/dL以上の高値でなければ、薬物療法を行わないこともよくあります。
まずは、適切な生活習慣の改善によって、血中の尿酸値をコントロールできるようにします。
これによって、痛風発作や腎臓障害などの合併症を低減していきます。医学的根拠に基づいた効果的な予防法は次の通りです。
まずは、プリン体の摂取量を1日400mg以下に抑えるようにします。そのためにはプリン体を多く含む食品の摂取は控えます。
【100gあたり400~1,000mgのプリン体を含む】
レバー、白子、魚卵(すじこ、たらこ 等)
【乾燥によって、乾燥前よりもプリン体が濃縮され、多くなっている】
干物、アンチョビ、かつお節、煮干し
【プリン体の多い、魚介類や甲殻類】
エビ、カニ、貝類、マグロ、カツオ、サバなどの青魚
上記以外では、鶏肉、豚肉、牛肉の赤身部分、エキス系調味料、濃縮スープ、ビール(アルコールの中では、プリン体が最も多い)
上記枠内の食品は排除の必要はありませんが、食する場合は量を控えるようにしてください。
野菜類(主に葉物野菜、根菜類:トマト、キャベツ、大根、ニンジン 等)、果物(りんご、バナナ、みかん 等)、炭水化物(米、パン、うどん、そば 等)、乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズ 等)、卵、豆腐(大豆製品は適量に努める)、こんにゃく、海藻類 など
メニューに関してですが、一品料理というよりは、主食・主菜・副菜をバランスよく組み合わせてください。また野菜や海藻類の摂取を多めにすることで、尿酸の排出を促進させる効果も見込めます。
適切な水分摂取は、高尿酸血症の予防や管理において、いくつかの効果が期待できるようになります。
具体的には、尿量を増やすことは体内の尿酸の排泄を促進させるようになります。
また血液中の尿酸濃度が下がっていきます。
さらに腎臓への負担が軽減する、尿路結石への発症リスクを減らすといったものです。
摂取量としては、1日2ℓ程度の量が望ましいです。
とくに起床時、就寝前、運動前後等に意識して水分補給をされるようにしてください。
飲み物の種類については、お茶や水が最適です。
肥満(とくに内臓脂肪型肥満)の方は、それだけで高尿酸血症のリスク因子です。
ただ適正体重(BMI(体格指数)の数値を25未満にする)に近づけることができれば、尿酸値の改善も期待できるようになります。
減量については、食事コントロールを行いつつ、適度な運動習慣を身につけていくことで、より高い効果が見込めるようになります。
ただ運動内容によっては、尿酸値を逆に上昇させてしまうケースもあるので、医師と相談しながら行う用意してください。
高尿酸血症の患者さんが治療(薬物療法)を開始する基準というのは、日本痛風・核酸代謝学会のガイドラインで定められています。
先にも述べましたが、血清尿酸値が7.0mg/dL以上と判定されたから行うのではなく、主に以下のようなケースが開始の目安となります。
なお治療にあたっては、どこまで下げるか目標とされる数値が設定されますが、一般的には6.0mg/dL以下としています。
ただし、痛風結節や腎機能低下がみられる場合は、より低い数値(5.0mg/dL未満)が推奨されています。
なお無症候性高尿酸血症の患者さんで、尿酸値が8.0mg/dL未満の場合、生活習慣の改善から行われるようになります。
高尿酸血症で用いられる薬物療法には、尿酸生成抑制薬と尿酸排泄促進薬があります。
処方されるお薬は、患者さんの高尿酸血症のタイプ(産生過剰型・排泄低下型・混合型)によって、用いられる種類は異なります。
体内で尿酸が産生するのを抑制させる作用がある薬剤です。酵素(主にキサンチンオキシダーゼ)の働きを阻害し、プリン体から尿酸への変換が抑えられるようになります。
ちなみに腎機能低下の患者さんでは、尿酸排泄促進薬よりも優先して選択されることもよく見受けられます。
薬効分類 | 一般名 | 商品名 |
---|---|---|
尿酸生成抑制薬(ブリン型XOR阻害薬) | アロプリノール | ザイロリック® |
腎臓での尿酸の再吸収を抑制していき、尿中への尿酸排泄を促進させる働きをします。
同薬は、排泄低下型の高尿酸血症の患者さんに効果的です。
同薬は、尿路結石の発症リスクを高くさせることもあるので、使用の際は十分な水分摂取(1日2L以上)も要します。
また、腎機能が低下している患者さん(eGFR 30mL/分/1.73m²未満)につきましては、原則的に使用は控えるようにします。
薬効分類 | 一般名 | 商品名 |
---|---|---|
尿酸排池促進業(非選択的尿酸再吸収阻害薬) | プロベネシド | ベネシッド® |
ブコローム | バラミヂン® | |
ベンズブロマロン | ユリノーム® | |
尿酸排池促進薬(選択的尿酸再吸収阻害薬) | ドチヌラド | ユリス® |
尿酸生成抑制薬(非ブリン型XOR阻害薬) | フェブキソスタット | フェブリク® |
トピロキソスタット | ウリアデック® | |
トピロリック® |
薬効分類 | 一般名 | 商品名 |
---|---|---|
尿酸分解酵素薬 | ラスブリカーゼ | ラスリテック® |
【診療内容】
糖尿病内科 一般内科 内分泌内科(甲状腺疾患など)
【対象疾患】
糖尿病 高血圧 脂質異常症 高尿酸血症・痛風 肥満症 動脈硬化 甲状腺疾患 睡眠時無呼吸症候群(いびき) 骨粗鬆症 (女性、男性(LOH症候群))など
予約tel.050-1721-5178
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